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報告会レポートExperience

2020年度京都府看護職連携キャリア支援事業

相互交流報告会オンライン開催レポート

  • 開催日時|2021年2月19日(金)13:00-17:00

本事業は、京都府下で活躍する看護職員たちの交流と、さらなるキャリア、スキルの向上を目的に、京都大学医学部附属病院・看護職キャリアパス支援センターが中心となって2015年4月から開始されました。毎年度末には一年の活動を振り返るとともに、次年度の参加施設の拡大、出向経験者が得た学びの共有などを目指して「相互交流報告会」を開催しています。新型コロナウィルスが流行している今年は、初のオンラインでの開催。一堂に会することは叶わなかったものの、各拠点から画面を通して想いを届けあう貴重な時間となりました。







【センター長からの挨拶】 一年の成果を、みんなで共有する場所に

2020年度の相互交流会は、京都大学医学部附属病院・看護職キャリアパス支援センター/井川順子センター長の挨拶から幕を開けました。はじめてのオンライン開催となる中で、井川センター長がモニター越しに最初に語りかけたのは、新型コロナウィルスとの戦いに日々取り組む看護師たちへの労いです。そして、例年とは違った環境下でも本事業を支えてくれたすべての関係者への感謝の言葉はつづきます。この日、全国からのオンライン参加者は80名を超えました。挨拶は、「この時間を少しでも有意義なものにしたいと思います」との言葉で締めくくられました。



【特別講演】優しさを伝えるということ

●本田美和子医師による講演がスタート 井川センター長の挨拶につづいて、本田美和子医師(独立行政法人国立病院機構東京医療センター/総合内科医長)による講演「優しさを伝える技術・ユマニチュード(R)」が行われました。「ユマニチュード」とは、フランス人で体育学の専門家、イブ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんにより開発されたケアの手法です。患者さんご自身やご家族、看護師が疲弊することも少なくない認知症看護の現場で、有効なケア方法として世界中で導入が進んでいます。本田医師は、そのユマニチュードをいち早く日本に紹介した国内における第一人者です。講演では、ユマニチュードとの出会いから効果、導入にあたり知ってもらいたいことなど、短い時間ではありましたが、丁寧な語り口で紹介してくださいました。



●4つのケアと5つのステップ ユマニチュードを構成するのは主に4つのケアであり、近くから真っ直ぐに少しでも長く患者さんの目を「見る」こと、穏やかに低めの声で前向きな言葉を「話す」こと、体は掴まずに広い面積をゆっくりと「触れる」こと、身体能力や感覚・認識力を維持するために患者さん自身が「立つ」時間を増やすことです。これら4つのケアを物語のように一連の5つのステップで完成させていきます。これまで暗く、険しい表情をしていた患者さんがユマニチュードを通してみるみる明るくなっていく、本田医師はそのような事例の数々を、VTRを使用しながら解説されました。




●スペシャルゲストも加わった質疑応答 ユマニチュードの効果を紹介する一方で、本田医師が力を込めて伝えていたのが、「これは決して魔法ではない」ということです。 「ユマニチュードは『あなたは大切な存在です』ということを患者さんに伝えるために、たくさんの失敗や試行錯誤からつくられた技術体系。一つひとつの動きには理由があり、正しいトレーニングを積めば誰もが実践できることなのです」(本田医師) そして最後は、ユマニチュードを臨床現場に広く伝えるために教育や研修に取り組んでいること、学会を設立したこと、ゆくゆくは認定病院制度を確立したいことなどが熱く語られました。 質疑応答の時間には、ユマニチュードの考案者であるイブ・ジネストさんがスペシャルゲストとして登場されるという嬉しいサプライズがありました。参加者から寄せられた質問に身振り手振りを交えながら、時にはユーモアたっぷりに、そして時には真摯に話される姿がとても印象的でした。


【交流者発表】

出向した看護師・助産師9人による報告リレー

休憩を挟んで行われたのが、2020年度の本事業に参加した5施設からの出向者9名によるプレゼンテーションです。それぞれの出向動機や出向先での学び、自施設に戻ってからの活動や今後の課題について、リレー形式で報告してもらいました。出向期間に差はあるものの、自施設では得られない体験を求め、「看護師、助産師としてよりレベルアップを図りたい」「その経験を自施設と地域に還元したい」という情熱は同じです。実際に出向者はそれぞれの学びを自施設で共有し、互いに大いに刺激を受けあっているようでした。 その後のディスカッションでは、各拠点のカメラを一斉にONにし、出向を終えて自施設に戻った看護師の元気な姿を見て喜んだり、お世話になった施設の看護部長との再会を喜んだり、まるで同窓会のように和やかな雰囲気の中で本事業に参加したことによる成果が語り合われました。

【2020年度報告者】
●京都大学医学部附属病院 山岸彩 ●京都大学医学部附属病院 武智 陽子 ●京丹後市立弥栄病院 谷口 公太郎 ●綾部市立病院 極山 翔子 ●市立福知山市民病院 和久 沙織  ●京丹後市立弥栄病院 寺田 智栄子 ●国保京丹波町病院 村上 永里子 ●京都大学医学部附属病院 野田 瞳 ●京都大学医学部附属病院 山中 博子

たとえコロナ禍がつづいても、交流は絶やさないように

たとえコロナ禍がつづいても、交流は絶やさないように

残念ながら、岩手医科大学看護学部・秋山智弥特任教授が所用により急遽不参加となったことで、井川センター長とのディスカッションは中止になりました。しかし、オンラインで開催された今年度の相互交流報告会は本事業によって得られた実りを再認識できる貴重な機会であり、新型コロナウィルスの先行きが不透明な中でも、京都府における地域医療構想に必要な看護人材の育成に向けて、次年度以降の期待を大いに抱くことができる時間となりました。


2019年度報告会レポート

REPORT 01

施設間の人材交流によって成しえた中堅看護師の育成とその成果

  • 市立福知山市民病院 看護部長
    髙松満里氏

現在、市立福知山市民病院に勤務する看護師の年齢構成は20~24歳の若手が18%、25~39歳の中堅が42%、そして40歳以上のベテランが40%。中でも最も大きな割合を占める中堅看護師のリテンションマネジメントが、大きな課題だったと髙松看護部長は語る。

「年代的に結婚や出産、育児などと重なる時期。最も脂が乗り、これからの活躍を期待したい頃であるにもかかわらず、家庭への意識が働き、看護のモチベーションが下がる傾向にありました」(髙松看護部長)
そこで必要と考えたのが新たな刺激を与えること。しかし、自施設だけではできることに限界がある。そんなときにはじまったのが本事業であり、平成28年度から参加をすることにした。これまでに2名の受け入れ、4名の出向者の送り出しをしている。髙松看護部長は出向したメンバーにはある共通点があると指摘する。それは、出向前は「自分のスキルアップのため」と考えていたメンバーが、出向後には「中堅の役割意識が芽生え、新人指導に対する内省と展望」を考えるように変化。そして自施設に戻ってから同僚を巻き込んだ業務改善や新人教育などに取り組むようになったということだ。

「これまでと大きく環境が異なる場所で、他流試合さながらの経験をすることで、組織人としてのあり方や役割・使命を見つめ直すきっかけになっているようです」(髙松看護部長)

また、出向後のメンバーがその貴重な経験を還元し、力を発揮するためには、それを受け入れるスタッフたちとの意識の共有が欠かせないと語った。

「出向者と出向未経験の間では、意識の違いから双方に負担を感じる部分が少なからずあったんです」(髙松看護部長)

そこで福知山市民病院では学びの共有を、広報誌でのみの発信から報告会の開催という形に切り替えた。そうすることで互いの理解が深まり協力体制が整ったばかりか、次年度以降の出向を希望する中堅看護師が大幅に増加することになった。これは中堅看護師のリテンションマネジメントという当初の目的に大きく合致するものと言えるだろう。
基調講演の最後を、髙松看護部長はこんな言葉で締めくくった。
「本事業は、複数人を一度に指導するこれまでの教育スタイルとは大きく異なる。一年にひとりしか、この経験を得ることはできない。しかし、その分確実に成長を促せると実感しています」(髙松看護部長)


REPORT 02

地域包括ケア時代の看護職のキャリアパス

  • 岩手医科大学看護学部 特任教授
    公益社団法人 日本看護協会 副会長
    秋山智弥氏

看護職キャリアパス支援センター初代センター長でもある、岩手医科大学看護学部・秋山特任教授の基調講演は、少子・高齢化が進み、地域包括ケアの重要性がますます高まる今、本事業を展開する意味を改めて解き明かすことからはじまった。
「この事業の目的は機能の異なる施設間で『在籍出向』による相互人事交流を推進し、自施設では経験できない医療機能の中での看護を深く体験的に学び、自施設の看護の振り返りを通して看護サービスの質を高めること。そして継続看護を確実に遂行できる『連携力』を鍛えることです」(秋山特任教授)

また、前センター長として数多くの出向者と関わった経験から、いくつかの印象的な声も紹介された。

「治療、緩和ケアと将来に悩む前に、まだまだ学ぶべきことがたくさんあると気づかさせてくれた一年でした」(大学病院→ホスピス)
「ホスピスにやって来る前の患者様と関わることで、看護の難しさを改めて知ることになりました」(ホスピス→大学病院)
「地域の急性期看護の腕だめしと意気込んでいましたが、まだまだ伸ばすべき点がたくさんあることに気づきました」(地域病院→大学病院)

ここに紹介したのはほんの一部だが、参加者の多くが環境の変化を通して看護観の変化・深化を体験している様子が窺えた。また、秋山特任教授は今後の看護師のモデルのひとつとして、オランダの小規模看護チーム「ビュートゾルフ」の事例を取り上げた。
一般的に在宅の現場では医師、看護師、介護士、家事代行、ケアマネージャーなど、さまざまな専門スタッフがチームを組んで利用者の自宅を訪問する。「でも、冷静になってみれば、看護師ひとりがいれば、ほとんどのことをできてしまいますよね?」と秋山特任教授は言う。実際、ビュートゾルフではICTをフル活用し、看護師が生活援助から診療補助までをすべて行うことでめざましい成果を上げている。そして、利用者と看護師の関係性は深くなり、まるで家族のような間柄になっていくのだそうだ。

「地域包括ケア時代のひとつのモデルケースではないでしょうか。そして、そうした場所で働く看護師には、ジェネラリストとしての高い能力が不可欠。そのためには知識、技術を幅広く深めなければいけません。イメージはマングローブの木です」(秋山特任教授)

太く、長い根を地中にたくさん伸ばすマングローブの木。そのように幅広い領域で看護力を深めていくには、まさに本事業が大きな効果を発揮していく。
「どこでキャリアをスタートしても、すべての看護師が足腰の強いジェネラリストとして成長できるように。そして連携に強い看護師が地域医療を牽引していけるように」(秋山特任教授)
医療機能の垣根を超えて活躍できる看護職の育成に向け、本事業に大きな期待を寄せた。


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