看護職キャリアパス支援センター直通電話

看護職キャリアパス支援センター直通電話

MENU

報告会レポートExperience

2023年度「相互交流報告」開催レポート

  • 開催日時:2024年1月19日(金)13時~16時
  • 会 場:キャンパスプラザ京都 2階ホール
  • 参加人数:37名

 本事業は、京都府下で活躍する看護職員たちの交流により、さらなるスキルの向上を目的に、2015年7月から京都大学医学部附属病院・看護職キャリアパス支援センターが中心となって開始されました。毎年度末には1年の活動を振り返るとともに、次年度の参加施設の拡大や、出向経験者が得た学びの共有などを目的に「相互交流報告会」を開催しています。コロナ禍の影響で2020年より3年間オンラインでの実施となっていましたが、今年度は4年ぶりに対面開催となりました。会場の「キャンパスプラザ京都」にて一堂に介し、旧交を温めるとともに活発な情報交換も行われ、有意義な時間となりました。

【開会の挨拶・事業概要説明】
助産師・看護師の人間的成長とキャリアアップ実現に向けて

京都大学医学部附属病院 看護部長
看護職キャリアパス支援センター センター長
井川 順子


 2023年度の相互交流報告会は、井川順子センター長による開会の挨拶からスタートしました。年始に発生した能登半島地震、日本航空機と海上保安庁機の衝突事故という悲しい出来事に心を痛め、お見舞い申しあげるとともに、その中で4年ぶりの対面開催を無事に迎えることができた喜びと、活動にご支援・ご協力いただいている多くの医療機関や関係者に感謝の意を述べました。

 開会の挨拶に続き、井川センター長から当事業の概要について説明がありました。事業の背景・目的や人事交流の状況を紹介するなかで、事業を推進することによって看護サービスの質の向上と継続看護を確実に遂行できる連携力を鍛えることが、中堅看護師のキャリアアップに繋がっていることに言及し、次のプログラムの「交流者報告」への期待感を高めました。

【交流者報告】

「報告者」
京都大学医学部附属病院 助産師 飯塚 愛莉/出向先:京丹後市立弥栄病院
市立福知山市民病院 看護師 居合 あずさ/出向先:京都大学医学部附属病院
京都大学医学部附属病院 助産師 高島 晶子/出向先:日本バプテスト病院

 今年度、本事業に参加している京都大学医学部附属病院の助産師2名、市立福知山市民病院の看護師1名の3名が、出向動機や出向先での学び、自施設に戻ってからの今後の活動や目標について、リレー形式でプレゼンテーションを行いました。三人三様に新たな気づきやスキルを獲得し、「学んだことを後輩の指導に繋げると同時に、自身の更なるスキル向上を目指して助産師外来に携わっていきたい」「看護師としてはもちろん、人として学ぶことの多かった一年。患者中心の看護やスタッフとの連携を、自施設に戻ってから自分が行動で示したい」「地域に根ざした混合病棟で幅広い看護を経験中。引き続きより多くのことを学ぶと同時に、京大病院での経験を出向先で活かせるよう頑張りたい」と、それぞれの出向先での経験からの学びや今後の展望について報告しました。また、3名の出向に関連する施設の管理者から、それぞれの素晴らしい学びと成長に対する喜びとともに、10年先20年先の医療を支えるような人材育成への使命感と期待感が伝わるお言葉をいただきました。

【特別講演】
『これからの地域に求められる看護職を地域全体で育成する
   ~地域定着枠(キャリア形成支援枠)の取り組み~』

青森県立保健大学 看護学科特任教授
学長特別補佐(地域定着推進担当)
藤本 幸男

●高齢化が進む青森県の取り組み『地域定着枠(キャリア形成支援枠)とは

 地域定着枠(キャリア形成支援枠)とは、高齢化が進む青森県における地域医療の課題を見据え、青森県立保健大学と地域の病院が連携・協力・支援し、これからの地域に求められる看護職の育成を目的として、2020年度の入試から設置された学校推薦型選抜(看護学科)です。


 藤本教授は、青森県における地域医療の課題である地域全体で支える地域包括ケアを推進するためには、地域全体の医療を理解し、総合力・実践力を有し、地域の関係機関との連携に強い看護職の育成が必要と考え、連携する病院等とともに「キャリアサポートモデルプログラム」を作成されています。講演は、その取り組みの概要についての説明からスタートしました。

●看護学科における青森県内出身者の県外流出の原因を探り、
 県内におけるキャリア形成支援体制の構築へ

 地域定着枠(キャリア形成支援枠)の構築に関連する要因として、二つ挙げられます。 一つ目の要因は青森県立保健大学看護学科の県内就職率、中でも県内出身者の県内就職率が低迷していることです。後日実施された学生アンケートから、就職先を決める基準として、「待遇」よりも「キャリアアップ支援体制の充実」を重要視していることも判明しました。 二つ目の要因は、青森県が抱える社会的背景です。全国と比べて、人口減少・少子高齢化が速いスピードで進んでいること、地域包括ケアの推進が地域全体で求められているという現状です。 こうした要因を踏まえ、地域包括ケアの推進に必要な連携能力等を有する看護職を育成するために、青森県内にて学生のキャリア形成支援体制の構築が必要だと考え、2017年より「地域定着枠(キャリア形成支援枠)」の取り組みが始まりました。 そして、①関係機関との調整(青森県の医師会・看護協会・健康福祉部)、②地域との協議・調整(中核病院・医療法人等)、③地域への支援(研究会開催)、④高校生等への周知、⑤地域定着枠学生への支援等の取り組みにより、2021年度(2020年度実施)より「地域定着枠(キャリア形成支援枠)」の入試(青森県内者5名募集)が開始されました。 また、西北五圏域グループワークを行い、地域完結型医療のモデル地域として、地域で必要な看護師を地域で話し合い・連携して育成する「西北五圏域キャリアサポートモデルプログラム」についての紹介もありました。

●「地元愛」と「やる気」のある学生を選抜し、入学前~就職後まで継続的にサポート

 地域定着枠(キャリア形成支援枠)の入試により選抜された「地元愛」と「やる気」のある学生は、現在、1期生から3期生までの16名が在籍しています。 そして現在では、「地域定着枠(キャリア形成支援枠)の取り組みに関する連携協力協定書」を締結した青森県全域の6医療圏での5中核病院・5医療法人等と連携・協力しながら支援しています。 具体的には、地域定着枠の学生への支援は入学前から始まり、専属のキャリアサポートコーディネーターを中心として、在学中は定期的な個人面談やミーティング、中核病院等の看護管理者との意見交換、病院見学・インターンシップ、就職を希望する病院との調整等を行います。また、就職した後も定期的にミーティングや面談・相談など、継続的かつ手厚く支援していきます。 地域定着枠から輩出された人材は、2025年に1期生が就職・ローテート勤務を開始し、2035年には就業者が55名に増加する見込みであり、青森県内で活躍する看護職の定着、地域包括ケアを推進する看護職の育成と配置など、看護の質の向上や地域医療への貢献が期待されます。 今後の課題・展望として、志願者の安定的確保、支援体制の強化、地域の病院等との連携・協力関係の強化・拡充、相互交流・人事交流の推進を挙げ、高齢化が加速する地域社会において、地域包括ケアの更なる推進への期待と看護職育成への熱意が感じられる講演となりました。

【ディスカッション】
「府内全域で連携した人材確保と人材育成の方向性」

進 行:秋山 智弥


出席者:橋元 春美
    井川 順子

名古屋大学医学部附属病院
卒後臨床研修・キャリア形成支援センター
看護キャリア支援室 室長/教授
京都府看護協会  専務理事
京都大学医学部附属病院 看護部長
看護職キャリアパス支援センター センター長

 看護職キャリアパス支援センター初代センター長である秋山教授による進行のもと、京都府看護協会・橋元春美専務理事、井川順子センター長を中心にディスカッションが行われました。 最初に、秋山教授より京都府看護職連携キャリア支援事業の立ち上げの背景と経緯について説明されました。看護のプロフェッショナリズムについて、患者/家族の擁護者として“まもる”、医療/ケアの提供者として“とどける”、医療チーム/場の調整者として“つなぐ”の3つを挙げ、また、ジェネラリストには“看る力”“護る力”“育む力”が求められること、そして、医療機能や施設の垣根を越えて、複数の領域における看護の経験を通して、施設間の連携に強いジェネラリストを育成するための取り組みとして、当事業の意義について述べられました。 続いて、橋元専務理事より京都府内の看護職員と看護職養成の現状について報告がありました。近年、看護職員数が減少傾向にあり、少子化を背景に看護職養成機関への入学者数も減少していること、また、府内の退職者調査では、25~30歳代の中堅看護職の退職率が高く、京都府内の看護職として生涯にわたり活躍できる仕組みづくりについての考えと当事業への期待を述べられました。秋山教授は、人事交流後の退職者数にも言及し「退職理由や転職後のキャリアなど個々の状況を数値化していくことが課題抽出に繋がるのではないか」と問いかけ、ディスカッションがスタートしました。 橋元専務理事は「退職者の中には、看護職として他職場に転職と看護職以外への転職が混在しており、サポートにおいては個々のキャリアを考えた面談が大事なのではないか」と話し、井川センター長は、人事交流後の退職者の中には看護職として新たな目標を見出した者もいることに触れながら、「大切な一人を一生涯支えるためには、卒前からの教育が必要であることを改めて実感している。一大学だけでなく府や医療機関、看護協会など、オール京都での取り組みが不可欠である」と、今後のビジョンを掲げました。会場からも「地域偏在への対策やライフイベントにおける世代ごとの課題も、オール京都のなかで解消できるのではないか」など、今後の取り組みを期待する多くの声が聴かれました。秋山教授は「平時から人事交流を推進し、施設間の連携に強い看護のジェネラリストの育成のためにも、この事業を継続していきたい」と締めくくりました。

【閉会の挨拶】

京都大学医学部附属病院 看護部長
看護職キャリアパス支援センター センター長
井川 順子

 コロナ禍のもと3年という月日を経て、ようやく対面開催が実現した2023年度相互交流報告会でした。今回、特別講演やディスカッションを通して、一人の人材を大事にし、生涯を通して支援していくことが管理者の大切な役割であることを共有するとともに、それをオール京都で実現していくためのたくさんのヒントが得られた有意義な場となりました。今後の当事業の活性化と継続への期待を込め、相互交流報告会の幕を閉じました。




過去の交流会開催レポート