渡辺緩和ケア・在宅クリニック
入院時から「暮らす」を見据えたがん看護を
2025年までに少子高齢社会に対応した地域包括ケアシステムを構築することを求められ、高度急性期医療の発展も進む今、病院の医療はますます暮らしの場へと移行してきています。しかし、国内で看護師として働く約150万人のうち、訪問看護に従事するひとは約4万人。諸外国と比較しても日本における人口対訪問看護師数は最も少ないのが現状です。そんな中で、当クリニックは在宅緩和ケアを主体とする在宅療養支援診療所(当該診療所の医師の指示に基づき24 時間訪問看護の提供が可能な体制)として、2019年にはじめて看護職キャリアパス支援にて京大病院より中堅看護師を迎えることになりました。出向者受け入れの主な目的は、生活を中心に組まれた医療・看護・福祉サービスの知識の不足に対し、退院支援と退院調整の実践はもちろん、在宅緩和ケアを学ぶこと。当クリニックスタッフにとっても、高度急性期医療と看護の視点と、在宅緩和ケアで展開される「生活の質・生命の質」を重視したケアを互いに研鑽していく機会となっています。 この出向プログラムが特別な場面で行われる医療ではなく、「いつでも、今そこにある希望の医療の提供を通して、ご家族とともにそのひとらしい人生を支える」ために必要な臨床知を得るチャンスとして、これからも発展していくことを願っています。
看護師
病棟では普通だったことが、訪問看護では違った
病棟で患者と関わる中で、訪問看護師が実際にどのようなケアをしているのか知らないことで、患者にきちんと説明ができないことに気づき、今回の交流出向に参加しました。渡辺緩和ケア在宅クリニックで2年間、訪問看護を学びました。訪問看護師として、病院や地域と連携しながら症状緩和はもちろん、病状進行によりADLが低下していく中で生活が保てるようサポートすること、終末期を見据えた意思決定支援などを行いました。医療度の高い患者の場合、家族でのケアが難しいと考えられ、 病状が進行するとホスピスを勧めることが多く、それが普通のことだと考えていましたが、家族でも対応ができるように指導すること、また、 状況に応じて家族、医師、看護師が常に連携し対応することで、最後まで自宅で過ごすことが可能なのだと学びました。
今の関わりを一番大事に
終末期~臨死期の患者のケアに対し、クリニックの医師や看護師は、患者にとって、数日、数時間後に死が訪れることは変わらない事実であり、その中で何が一番安楽かという視点でケアをされていました。意識レベルや呼吸状態低下のある患者が入浴が大好きということで、亡くなられる数時間前に、医療者の判断の元、入浴を行いました。その時の患者と家族の非常に良い表情が印象的でした。亡くなる瞬間を看取ることが一番大事ではなく、生きているうちに思いを伝え、後悔のないよう今の関わりを一番大事にするように伝え、また亡くなられた後は、家族と一緒にエンゼルケアを行い、いろんなお話をしながら一緒にケアを行うことで、ブリーフケアにも繋がると学びました。療養場所はそれぞれに長所と短所があり、生活者という視点を持ち、患者、家族にとってどこが 一番いいと思われるか選択を行っていくことが重要だと感じました。
訪問看護師になる目標に向けて研鑽したい
京大病院の心臓血管外科病棟にて患者の退院調整にも携わってきましたが、在宅支援の実態が自分の中で不明確なまま関わっている課題意識がありました。学生の頃から在宅看護に関心を持ち、ゆくゆくは訪問看護師として働きたいとの目標もあり、また、子育てしながら働く今、自己のキャリアアップと家庭との両立を考える機会にもなると考え、出向を志望しました。 出向を通して、在宅医療の実際と在宅看護技術について学び、看護師としてスキルアップと、緩和ケアについての知識を深め実践することを目標に据えています。
患者・家族との信頼関係の大切さを再認識
在宅看護の現場を経験し、病院のように検査データが頻繁には揃わない状況下で、医師・看護師のフィジカルアセスメントで患者の状態を見極めていく重要性を学びました。患者の状態が急激に悪化するような場面でも、医療者が常に観察しているわけではないため、患者・家族との信頼関係や情報共有が大切になります。本人の状態や経過を先読みし、公的サービスの導入時期や必要な処置などに先手で対応していくことが、患者・家族の負担感を減らし、自宅で安楽に暮らすことに繫がると実感しました。訪問看護師は、家族が生活する家に「お邪魔する」立場です。患者・家族の考え方や価値観を尊重して関わり、医療者として適切なアドバイスを行えるよう研鑽を続けたいと思います。
2015~2024年度人材交流実績
- 京大病院 ⇒ 渡辺緩和ケア・在宅クリニック:看護師2名

