日本バプテスト病院
「命と向き合う現場で 看護師として大きな成長を」お互いを知ることの大切さ
医療がめざましい進捗を遂げる中、遺伝子治療をはじめとしたオプ ションが増え、ギリギリまで病と闘う患者さんが増えました。そうした状況にあっては、私たち緩和ケア病棟の看護師も急性期病院で行われている治療をもっと勉強し、緩和ケアに役立てていく必要があります。また、治療から緩和ケアに移行するということは、患者さんにとって最後の希望を奪われるという意味も持ちます。その計り知れない苦痛に寄り添うためには、急性期病棟の看護師さんも緩和ケアについて知っていただくことが大切。看護職キャリアパス支援事業は、それらを互いに学び合える素晴らしい機会なのではないでしょうか。
緩和ケアで看護の基本を
患者さんの最後の時間を支えるためには、時間をかけて信頼関係を築き、対話を重ね、その人の人生の物語に寄り添うことが欠かせません。しかし、それは緩和ケアに限ったことではなく、すべての看護の基本であるはず。緩和ケア病棟に派遣された際にはぜひそのことをじっくり学んで欲しいと思います。患者さんの死に立ち会うことは看護師にとって苦しみが伴います。当院の緩和ケア病棟ではデスカンファレンスを行い、皆で思いを共有する時間を取っています。京大病院から出向されている方にもぜひ参加してもらい、いろいろな看護師たちの思いを知ってもらえたら嬉しく思います。
看護師
最先端の新生児看護を学ぶ
NICUの看護師として働いて約10年になりますが、私は当院のNICUしか経験していません。重症児を看護するたびに他の施設ではこのような場合どうしているのだろか、自分達の実践している看護は正しいのだろうかと考えていました。経験年数が増すごとに自分の知識不足を痛感しながらも、後輩を指導する立場にあることにジレンマを感じていました。そのようなときに上司からこのような制度があるので参加してみてはどうかと提案され、興味を持ちました。京都大学医学部附属病院は最重症の新生児を受け入れている施設です。また、ファミリーセンタードケアに取り組まれていると聞いていたため、ファミリーセンタードケアを含めた最新の新生児看護について学びたいと思いました。
当院でもファミリーセンタードケアの推進を
3ケ月という短い期間ではありましたが、沢山のことを経験させていただきました。 手術前後の先天性心疾患児の看護や、ストーマ造設術後の看護、ICUの見学などをさせていただき、当院では経験したことのないケアも多く貴重な経験となりました。日々看護していく中で、医師や看護師が児の状態を両親と一緒にアセスメントしている場面を何度も目にしました。共に医療する一員として両親と関わることで、親役割の獲得にも繋がり、医療者と両親の関係性が構築されていくことを学びました。また、当院よりも両親が主体的にケアに参加されていることや、医療的な処置も両親と共に実施されていることも印象的でした。ここからは医療者でないとできないと決め込んでいたことに気づかされる毎日でした。ファミリーセンタードケアに関する学びも多く得ました。学びを病棟全体で共有し、当院NICUのファミリーセンタードケアを推進していきたいと思います。
看護師
適切な症状コントロールを図るためには
今まで、全身状態、表情・口調、活気からアセスメントをしてきましたが、日本バプテスト病院のホスピスに出向し、さらに患者自身がどの程度の症状緩和を望んでいるのか、病状の受け入れ方はどのようなものなのかを把握する必要性を強く感じるようになりました。たとえば、薬剤を使用することで午睡の時間が増えてもいいという方がいれば、その一方で「家族と話す時間を持ちたい」「仕事をしたい」「身辺整理をしたい」といった思いから薬剤の使用に消極的な方もいます。また、中には「苦痛症状があることで病と闘っていると思える。何もしないと廃人になってしまう」という考えをお持ちの方もいると知れたのは、実際にホスピスで働くことができたからこそです。医療者の一方的な考えではなく、患者の思いを理解しないと適切な症状コントロールはできないと、実感する機会になりました。
高圧的・威圧的な患者を前にして
長い治療経過をたどる中、特定の看護師に対して過度に高圧的・威圧的な態度をとる患者がいらっしゃいました。元々のキャラクターもあったかとは思いますが、ご自身の病状悪化への不安、看護師間で統一できていなかった処置への恐怖心も重なっていたのだと思います。そして、その患者は最終的に精神面へのアプローチをしきれないまま逝去されました。少しでもその方の心の負担を取り除き、医療者との関係性を良好に保つことはできなかったのか。正解は簡単に出るものではありませんが、患者と医療者が対等な立場でケアにあたれるような環境づくりについてもしっかりと学んでいきたいと考えるようになりました。
切れ目のない看護を学び、実践したい
京大病院NICUで7年目となり、今まで超急性期の看護から退院支援までを経験してきましたが、他施設のNICUを経験し、施設間での看護実践の違いも学び、看護観を深めたいと考え、また、地域に戻った患者・家族が直面する課題や問題を知り、胎児期からの切れ目のない支援についても学びたいと思い、当プログラムへの参加を志望しました。日本バプテスト病院は、地域密着型の急性期病院として、周産期母子医療センターでは正常分娩だけでなく母体搬送を含むハイリスク分娩も行い、NICUでは新生児搬送も積極的に受け入れています。
退院後の生活を見据えた視点を大切に
出向先では産院へのお迎えを初めて経験し、知識や経験不足が命取りになることを実感しています。また、退院前訪問により退院後の生活を家族と一緒に考える時間を持つことで、よりスムーズに自宅生活へ移行する手助けとなり、退院後訪問は実際に自宅での生活を開始してみて困ったこと等を解消できる場となることを学びました。在宅生活を開始するうえでNICUの役割は大きく、退院後の児の成長発達や必要となりうる支援、在宅生活の状況など、退院後の在宅生活を見据えた支援の必要性を再認識しました。そして、自施設よりも高い頻度で行われる倫理カンファレンスも印象的で、刻々と変化する児の状況に沿って病棟全体が共通意識を持って関わる体制はとても勉強になります。小児科外来では、私がこれまでNICUから送り出した児のその後を実際に見ることができ、貴重な経験となっています。
患者が望む時間を柔軟につくれるように
京大病院でこれまで経験した看護では、入院の時点では治療を達成することがおのずと医療者と患者双方にとっての目標になっていました。しかし、緩和ケアの場合は患者個々によって目標とする状況が異なります。医療者が適切と考える症状緩和だけでなく、患者自身の望む時間をどうやってつくればいいのか、出向を通して考えるようになったことが私の中での一番の変化だと思います。勤務当初はホスピスに入院後、症状緩和が図れた患者を見て安堵している家族に対し、厳しい状況を伝えることに躊躇うこともありました。しかし、家族は今までの治療経過から厳しい状況を想定されており、今の全身状態に対しての情報を求めていることも同時に知りました。予期悲嘆の感情を吐露するケースも少なくありませんでしたが、看取りの時間に向けた心の準備の時間を医療者が支えていくことが必要だと感じることができ、大きな学びにつながっています。
戻る場所があることが、大きなモチベーションに
緩和ケアを学びたいと考えはじめた当初は、転職を前提にしていましたが、上司に相談するなかで、この交流プログラムに参加することを決めました。転職し、新たな現場で働くことでも学びは得られたと思いますが、私は定期的に京大病院に戻ってきて、報告や相談をする時間が大きな助けになりました。慣れない環境では業務に追われがちですが、報告や相談をする時間があることで立ち止まって考えることができ、モチベーションを維持できました。在籍出向であるというのは、本当に素晴らしいことだと思います。病院と病院、病院と地域の連携が強く求められるようになっている今日、このプログラムで学んだことを生かし、貢献していきたいと思います。
助産師
幅広い看護の経験を通し、豊かな助産ケアの実践を目指して
京大病院の産科病棟での約5年間、ハイリスク妊産婦と関わる中で、多くの看護ケアや助産ケアを学ぶ事が出来ました。しかし、ローリスクの妊娠・分娩管理や経過に関わる経験が少なく、正常分娩管理や合併症に関する治療についての理解をより深めることで、より良い助産ケアが出来るのではないかと考えるようになりました。日本バプテスト病院では正常分娩が多く、無痛分娩も積極的に行われており、ハイリスク妊産婦の対応もされています。また、小児科・婦人科・内科の混合病棟でもあり、治療過程や看護の実践も学ぶ事ができます。これらの幅広い看護の経験を通して豊かな助産ケアに繋げていきたいと考えています。
看護をより深く学ぶ事で、助産ケアの視野が広がった
小児科・婦人科・内科の様々な患者の治癒過程での関わりを通して、幅広い看護を勉強させて頂いています。小児の疾患や成長過程を考慮した声掛けや看護、児に付き添うご両親への家族看護について考えさせられることが多いです。また、婦人科疾患に対する手術や術後管理、内科疾患の治療や看護を経験する事で、幅広い看護の視点を持てるようになりました。現在はその視点を以って分娩介助に関わる事が出来ており、より良い助産ケアに繋がっていると感じています。今後は、自施設で学んできた事を日本バプテスト病院に伝えていくことも大切な目標の一つとなりました。一日一日を大切に、これからも頑張っていきたいと思います。
2015~2024年度人材交流実績
- 日本バプテスト病院 ⇒ 京大病院:看護師1名
- 京大病院 ⇒ 日本バプテスト病院:看護師2名 助産師2名

