市立福知山市民病院
「10年後、20年後に活躍する人材を育成するために」
中堅看護師のリテンションマネジメントに
市立福知山市民病院ではやっと一人前になった頃の看護師たちが、都市部の大病院への転職や大学進学を志向するか、子育てとの両立に悩むという傾向にあり、中堅看護師をいかにリテンションマネジメントするかが大きな課題でした。そこで参加したのが、看護職キャリアパス支援事業。派遣にあたって互いに話し合うことはキャリアプランを共有することに、一度当院を離れることは看護師自身が自分や仕事を見つめ直すきっかけになります。派遣先で成長し、また新たな責任や使命感を見つけてくれることを、当院の看護師たちには期待しています。
双方にとってメリットがあるプログラム
地域の病院としては派遣をするだけでなく、派遣を受け入れることも大切だと考えています。これまでに京大病院から来ていただいた2名の助産師・看護師は、当院のスタッフにとても良い刺激を与えてくれました。また、地域の現状や思いを知ってもらうことは、医療機関同士での地域連携を深めることに役立つと思います。最先端の看護と地域ならではの看護、どちらも知る看護師がますます重要になることは確実です。京都府内でそうした人材をひとりでも多く育成していくためにも、看護職キャリアパス支援事業には今後も積極的に関わっていきたいと考えています。
看護師
出向でラダーレベルIVの技術習得を
「自身の集中ケアに関する知識・技術の向上」 「集中ケアに従事する看護師の育成手法の確立」 「集中ケアチーム内での連携力の強化」を目的に京大病院へ出向しました。出向の終盤では、ICUクリニカルラダーレベルIV「ライターの指導のもと、小児患児の看護を見学できる」ことを目指して看護に取り組みました。小児心臓外科の術直後の患児はバイタルサインや症状の変化が急速かつ劇的で、よりきめ細やかな観察・アセスメントが求められることを看護実践を通して改めて学ぶことができました。
指導者としてのヒントも豊富に
技術面での学びが多いことはもちろん、改めて指導を受ける側に身を置くことで、教育体制やシステムで気づくこともたくさんあります。例えば、新入職の看護師がICUで小児患児を受け持つまでのステップです。どのタイミングで、どのレベルに達すれば受け持ちが可能なのかを丹念にマニュアル化されている点は、自施設でも取り入れたいと考えています。特に小児患児の看護実践を学ぶ上で、患児や家族がICUという環境下において何を求め、それを提供するためにどう環境を整えていくべきか、そのヒントもたくさん得られたと思います。
看護師としてレベルアップするために
市立福知山市民病院は、京都府北部の中核病院として3次救急を担う役割と機能を持ち、脳血管内治療及び脳神経外科領域の積極的な治療が行われており、脳血管疾患患者のADLやQOL向上のためには、急性期から病態を把握した看護介入がますます重要になってきました。また、中堅看護師として後輩指導を担う立場にもあり、より自身を成長させ、病院と地域に貢献できるよう、当プログラムに参加することに決めました。
成長することで、地域医療に貢献を
出向の目標は「エビデンスに基づく脳血管疾患に対する看護力の向上」「脳血管疾患患者、家族を支える多職種連携のスキルアップ」「脳神経疾患看護を担う新人看護師や後輩の育成力の強化」「脳卒中(脳血管疾患)の専門性の向上」です。これらの目標をクリアすることで、私自身がひとりの看護師として成長することはもちろん、3次救急を展開する基幹病院として福知山市民病院全体の看護力を高められたら、これほど嬉しいことはありません。京都北部で暮らす方たちが安心して医療を受けられることを目指して、たとえ壁にぶつかることがあっても、一生懸命に取り組んでいきたいと思います。
看護師
クリティカルケア看護をさらに深めたい一心で参加を決意
当プログラムのお話をいただいたのは、救命救急病棟に異動後9か月が経った頃で、クリティカルケア看護をもっと深めたいと考えていた時期でした。結婚して間もなく、家庭を空けることにも不安があったのも事実ですが、同じ看護師である夫に背中を押され、両親たちの理解もあり、自分が看護師として成長できるまたとないチャンスをふいにしたくないという思いから参加することを決意しました。自分の技術が別の病院で通用するのか自信がありませんでしたが、師長をはじめとする京大病院のスタッフの皆さんに支えられ、なんとか日々の業務を行えています。
担当が変わっても同じ質の看護ができるマニュアル化の大切さを知りました
京大病院は標準化、マニュアル化が進んでおり、看護師が変わってもケアの質、方法にばらつきがなく、統一したケアを提供することが可能であり、市立福知山市民病院にも取り入れたいと思いました。病院が変わることで戸惑うこともありますが、変わらないのは患者一人ひとりの思いに寄り添って看護を行うという当たり前のことであり、看護師としてたくさんの患者と関わってきた経験は、京大病院の集中治療室でも役に立っていると思います。 私自身は看護師であり続ける限り、市立福知山市民病院で勤めようと考えています。だから、今 ここでの経験を必ず持ち帰って、待ってくれているスタッフたちに還元したい。そうすることで地域の医療が充実し、中丹エリアで暮らす患者が安心して暮らせることに繋げられたらうれしいです。
後輩育成のためには、自分自身が成長を
私は、血液内科病棟で副看護師長として、疾患と副作用が及ぼす全身状態の病態生理、治療段階や治療経過を踏まえたケアを提供し、身体・精神的ケア、生活の支援を行える看護師を育成する役割も担っており、私自身が、医学的知識を学び直し、展開した看護を言語化できるようになること、アセスメント能力の高い看護師を育成するスキルを身につけることが不可欠です。自施設では得られない学びを求めて、看護人材交流に参加することを希望しました。
学んだことを実践の場に還元できるように
京都大学医学部附属病院では、研修での成果がフィジカルアセスメント能力や患者モニタリング能力、さらには多職種と論理的に議論できる力として、実践の場で存分に発揮されています。患者の全身状態を把握するために必要な情報収集をペアで行い、疾患と治療段階を踏まえて看護展開を話す機会をもつこと、私自身が思考・発話を意識し、ロールモデルとして積極的に行うとともに、スタッフを支援する環境を作ることにも力を入れていきたいと考えています。
異なる環境で新しい学びを
私は入職してから消化器内科と総合内科の混合病棟で勤務しており、癌看護に興味がありました。5年目で市民病院から大学病院へ出向することに対して、自分がやっていけるのかという不安は大きかったですが、学びたい分野の部署へ出向させていただけること、また上司の後押しもあり、京大病院への出向を決めました。自施設でも化学療法を受ける患者と関わってきましたが、より最先端な治療が行われている京大病院で、より専門的な看護について学び、自施設にその学びを持ち帰りたいと思っています。
学んだことを勤務場所が変わっても活かせるように
出向当初はとても緊張しており、自施設とのシステムの違いもあり、慣れるまで戸惑いもありましたが、部署のスタッフ皆に優しく温かく迎えていただき、分からないことは何でも尋ねられる環境で安心して勤務することができました。抗癌剤投与の際の症状観察や血管漏出予防対策の徹底、多職種との協働、スタッフへ思いやりを持って接することなど、出向していなければ得られなかった学びや気づきを得ることができ、自施設に戻ってからも継続して、できることから実践していこうと思います。看護師としても人としても成長できた大切な1年になりました。出向中に学んだことを忘れず、このような機会をくださった方々に感謝しながら、今後も患者中心の看護を考え、そして深めながら実践していきたいです。
助産師
市内と地域の差を改めて実感
出向を機にはじめて京都市を出て、最も地域差を感じたことは、医療資源や医療機関の数です。出向先である市立福知山市民病院は地域の中核病院であり、非常に大きい責任を担っており、抱えている疾患や背景、健康レベルも様々で、診療科の垣根を超えた幅広い看護が求められます。そのような環境で働くことで、看護師としての観察・アセスメント力、看護技術の向上を図れたと思います。周産期の現場では、妊娠や分娩のリスクは低いものの、社会的ハイリスクが多いことも特徴のように感じました。地域では病院と行政との距離感も近く、病院での管理を終えてから地域でどのように見守られているか知ることができました。その中で病院で関わる際も対象者は「生活者」であることを忘れずケアすることの大切さを学ぶことができました。
出向というシステムでつながった縁を力に
大学病院を一度離れることで、京大病院の強みや課題、自身の課題や今後について改めて考える機会となりました。また、助産師という仕事の責任の重さをいま一度知る一方、分娩の神秘や感動に触れ、充実した日々を過ごすことができました。助産師は生まれる前から最後の時まで幅広い対象を支えることができることも再認識しました。病院にはそれぞれの役割があり、その役割を果たすことで安全な妊娠~育児期を支える事ができると思います。私は、ハイリスク症例の搬送を受けることが多い京大病院で、対象の方を支えたいと思いました。今後は、出向というシステムでつながった縁を力に変えるためにも、継続して交流できることが大切だと思います。そして、多方面から妊産婦、家族、生まれてくる児を支える環境を整えていきたいと考えています。
看護師
急性期のジェネラリストをめざして
これまで京大病院の循環器内科病棟とICUでたくさんの事を学んできました。今後も急性期の分野でジェネラリストとして看護師を継続したいと考え悩んでいる時に、上司から出向の提案があり、地域に根差した中核病院の看護の実際を学んでみたいという気持ちになりました。市立福知山市民病院の救命救急病棟には、京大病院への人事交流経験者が2名おられ、自己の課題を持って意欲的に取り組まれ、帰院後も活躍されていることにもすごく刺激を受けました。私自身は子育て中ですが、家族の協力や後押しがあったことに大きな感謝をしています。
退院支援に対する意識の高さに驚き
特に印象的だったのが、市立福知山市民病院のスタッフの退院支援に対する意識の高さでした。夜間緊急入院の末期患者に対して、すぐに情報を共有し、多職種で退院調整できた症例がありました。その方は自宅退院後3日で亡くなられましたが、早期介入ができたことで、患者と家族が望む自宅退院ができ、家族に見守られながら最後を過ごせた症例でした。その他にも学ぶことが多くあり、最善の医療の在り方を改めて実感させられました。また、今後は積極的に教育の面にも関り後輩の育成や指導などに力を注いでいきたいと考えるようになったことも、私の中の大きな変化と捉えています。
手術見学の代わりにオンラインを活用
市立福知山市民病院がダビンチを用いたロボット支援下前立腺摘出を導入するにあたり、京大病院手術室看護師として協力できることはないかと、看護師長より打診がありました。これまでであれば現場見学の受け入れなどができましたが、新型コロナウイルスの流行によりそれも簡単には叶いません。そこで検討を始めたのが、Web会議システムを利用したオンラインでの交流でした。交流当日に向けては、手術風景を収録した動画を作成しました。約一週間かけて編集し、臨場感とともにわかりやすさにもこだわった動画を作りあげました。当日は、泌尿器科の担当看護師2名が行い、私は全体の調整を担当しました。不明な点は質問をいただきながら、手術の紹介をさせていただきました。
次回を見据えた意見や課題も
市立福知山市民病院の方からは、「十分に伝わる内容で、大変参考になりました。また、臨床工学技士も参加することができ、担当の看護師も全員が一度に参加することができました。」とのコメントをいただきました。動画の編集作業は大変でしたが、自部署での教育に活用できないかと検討をしています。また、「次の機会があれば、事前に先方から知りたいことをヒアリングする機会を設け、もう少しニーズを汲み取った手術紹介にしたい」との意見も参加したメンバーから出ています。実際に見学に来ていただくことでお伝えできることも多くあると思いますが、コロナ禍における協力の形を模索する良いチャンスをいただきました。
2015~2024年度人材交流実績
- 市立福知山市民病院 ⇒ 京大病院:看護師 5名
- 京大病院 ⇒ 市立福知山市民病院:看護師 2名 助産師 1名

