綾部市立病院
「日々の当たり前を認識し、自らの新しい目標に向かう」
ゆとりを持った派遣計画を
綾部市立病院は看護職キャリアパス支援事業に初年度から参加しており、当院から京大病院へ6名の看護師が、京大病院から当院へ2名の看護師と1名の助産師が派遣されています。これまでの取り組みを通して感じるのは、派遣期間はある程度長めに設定する方がより良い結果につながるのではないかということ。短期間の派遣では新しい環境や仕事に慣れることに精一杯で、苦労や戸惑いばかりが残ってしまうケースもあります。そうならず、いくつかの壁を乗り越え、自分自身で成果や自信を実感できるようにするためには、ある程度ゆとりある計画づくりが大切なのではないでしょうか。
京大病院での勤務が刺激に
派遣を経験したスタッフのひとりは現在、集中治療室運営委員会のメンバーとしてICUでの活動について提案したり、新たなエキスパート分野にチャレンジしたりと、チームの活性化に積極的に取り組んでくれています。京大病院での勤務が良い刺激となり、自分自身で新しい目標を見つけ、進んでいく姿を見ることは看護部長としてとてもうれしく思います。これまでの日常の当たり前を再認識し、新たな目標に向かって自身のキャリアを形成していってくれていることが人材交流事業参加の成果です。また、地域の一病院でありながら京大病院で最先端の看護を学べるチャンスがあるということは、看護学生たちへアピールにつながっていると強く実感しています。
看護師
患者自身の人生を大切にできる看護師に
綾部市立病院のICUを中心に経験し、症状・治療はもちろん、患者自身が持っている力を最大限に活かすことを大切に看護に長く携わる中で、自分自身も綾部らしい看護師に少しずつなれてきたと思っています。綾部市立病院のICUは単独ではなく混合病棟の中にあり、幅広い医療、看護を経験でき、様々な場面での対応力がついたことも感謝していることのひとつです。その一方、ICUの看護師としてさらに広い視野を持ち、高度な救急現場を体験したいという気持ちも。そんな時に京大病院の救急・集中治療部への派遣があることを教えてもらい、すぐに応募することにしました。
派遣で得た学びを融合させていくことがこれからの目標
これまでCCUのイメージは「高度な医療機器に囲まれた重症な患者ばかり」でしたが、実際は早期からリハビリを行い、患者のQOL、ADLを維持・向上を大切にされていることにとても感動しました。同時に、リハビリや適切な鎮静について、その重要性を理解しながらもマンパワー不足を言い訳に、優先度を下げてきた自分を反省する機会にも。京大病院での学びをそのままの形で綾部市立病院に持ち込むのは難しいかもしれませんが、綾部市立病院のいい所と新しく学んだことをうまく融合させていくことが、これからの目標です。
老人看護専門看護師の活躍を目の前で体感
高齢患者や家族の思いを尊重し、最期の時までそのひとらしく過ごせるように支援したいと、老人看護専門看護師を目指していますが、綾部市立病院には専門看護師がおらず、実際にどのように活動しているのか知ることができませんでした。そこで、出向プログラムに参加を決意。京大病院では老人看護専門看護師と共に働くことで、組織横断的に高齢・認知症患者に対する看護実践や退院調整のサポートだけでなく、倫理ラウンドや院内研修、外部講師としても積極的に活動されていることを知ることができました。
将来の目標とやるべきことが明確に
京大病院ならではの最先端の研修に参加できたことも大きな収穫です。VR技術を使用し、認知症の世界を疑似体験した研修では、当事者の立場を実感することで、安心・心地よさを意識した関わりを考えることができました。他にも循環器看護の専門的な技術や大学病院での退院支援の方法など、自施設とはひと味違った経験もたくさん。当初の目的だった老人看護専門看護師の働き方にとどまらず、自分が将来どんなふうに働いていきたいのかを幅広く考えるきっかけになりました。
知識や技術だけでなく、人脈も広がります!
専門看護師になるには大学院に行くことが必要ですが、私の周囲には受験を経験した人がおらず、相談することが難しい状況でした。しかし、当プログラムに参加し、老人看護専門看護師、大学の教授など、たくさんの人との繫がりを持つことができました。知識や技術だけでなく、人脈も広がる、素敵な機会だと思います!
看護師
子どもや両親たちのために、私ができることを
小児科のある混合病棟への配属となって5年が経ちました。地域にある病院のため症例数に限りはありますが、さまざまな疾患を抱える児、両親と関わる中、日々どのようなケアをしていくべきか悩む場面も少なくありません。子どもは、少しの変化が生命予後を大きく左右する危険があります。だからこそ私自身がレベルアップし、子どもの小さな声や異常を早期発見できる看護師へと成長したい、子どもや両親が安心して笑顔で安全に過ごせる療養環境を整えたい、そんな思いから当プログラムに参加することを決めました。
専門性の高い小児医療と看護の現場に
子どもは大人のように自らの痛みや身体の違和感を言葉で表すことができません。京大病院では専門性の高い小児医療と看護を学び、十分な観察力やアセスメント力を養うと同時に、看護実践能力が向上するよう取り組んでいきたいと考えています。また、治療後の子どもたちが、保育園や学校など地域社会で過ごすことも考慮した在宅療養へのサポートについて学ぶことも目標です。目標を少しでも多く達成するため、まずは京大病院の小児医療、看護を提供する一員として戦力になれるよう頑張っていきたいと思います。
自分自身と病院、どちらもレベルアップするために
綾部市立病院手術室に勤務して20年になります。超高齢化・超少子化が進み、個別性のある看護が求められる中で、手術術式もますます多様化してきました。そんな中で私たち看護師が細心の注意を払うものの、体位による術後神経症状を訴える患者もおられます。「果たして私たちが行う体位固定法は正しいのだろうか。」「指導者の立場にある私は、正しく新人に教育をできているのだろうか。」そうした不安を上司に相談したところ、当プログラムを紹介いただき、私自身の技術を高めるため、綾部市立病院全体のレベルアップを図るためにも、すぐに挑戦をしたいという気持ちになりました。
看護師歴20年、新しい経験こそ成長の鍵
出向期間の半年間は、実にさまざまな場面に立ち会わせていただきました。例えば、数多くの体位固定法がある呼吸器外科、消化管外科、整形外科の手術では、数種類の耐圧分散ウレタンフォームマットを用いた体位固定と除圧法の技術を身につけることができました。また、自施設では受け入れが少ない0歳・幼児の看護受け入れ体制を知ることができたのも貴重な経験です。医療は日々進化し多様化しています。そのような中でも患者中心の看護を別の視点から学ぶことは非常に有意義でした。今回得た知識や経験を、綾部市立病院に還元していくことが、これからの私の仕事だと考えています。
看護師
地域医療や看護の実際を、より深く学ぶために
国保京丹波町病院での1年間の出向を経て、地域医療や看護の実際をもっと学びたいという思い、綾部市立病院の地域ケア包括病棟に半年間の追加出向をさせていただきました。入院時から患者一人ひとりの退院を見据えて、様々な職種の視点を学び、看護師としてどうあるべきかを考えることができました。また、地域医療に強い綾部市立病院は、隣接する訪問看護ステーションとのコミュニケーションが緊密で、退院日が近くなると実際に帰る家に関係スタッフ皆で訪問し、在宅での生活を具体的にイメージしながら、退院へとつなげていく現場を知ることができました。
たくさんの素敵な出会いに感謝
1年半の出向期間で2施設も経験でき、本当に感謝をしています。不安や大変なこともありましたが、看護師としての自分自身を振り返ると同時に、オン・オフの切り替えが少しずつできるようになったことを実感できました。また、素敵なスタッフや上司と出会い、患者のために楽しく看護を実践でき、充実した出向期間を終えることができました。現在は、自分に不足しているところや看護観をより深めるために京大病院に戻り、日々患者と向き合っています。
急性期から在宅までさまざまな医療現場を経験し、
患者と伴走できる看護をめざして
京大病院で5年間、婦人科と神経内科の混合病棟で勤務し、緩和ケアにも積極的に取り組み、最期をどこで迎えたいか患者と一緒に悩み考え、在宅やホスピスへの退院支援も行っていました。今回派遣を希望したのも、療養中の患者と向き合い“その人らしく生きること”を第一に考え、“牽引するのでなく伴走できる看護”を提供したいと思ったからです。綾部市立病院も京大病院と同じPNS(パートナーシップナーシングシステム)にて、自然に慣れることができ、環境が変わっても看護の目的や対象は同じ、今までの経験がゼロになるわけではなく、"看護師6年目として自信を持って仕事をしたらいいのだ"と思えるようになってからは、ずいぶん気持ちも楽になりました。 綾部市は高齢化率が市内に比べて高く、80歳以上の患者が大半を占め、認知力低下や複数の疾患に罹患している方も多く、日常生活援助がぐっと増えました。京大病院では、高度医療を患者が安全・安楽に受けられるように援助することも看護師の重要な役割ですが、入院はあくまで通過点で、生活の場へ帰ることを予測しながら日々患者と接することが大事だということに気づかされました。以前、京大病院で退院調整看護師であった宇都宮宏子先生の「なるべく優しい医療、暮らしに帰れる医療をしていますか」という言葉の意味をひしひしと感じ、それを実践できるようにしたいと思いました。来年度は訪問看護を経験させていただく予定です。京大病院に戻った折には派遣の経験を活かし、地域連携に尽力したいと考えています。将来的にはもっともっと経験を積んで、病気をかかえながらもその人らしく生きることができるようにサポートできる在宅看護のスペシャリストになりたいと思っています。
助産師
助産師として、知識も、技術も成長させたくて
「新しい家族が誕生するという貴重な場面のお手伝いがしたい」「京大病院ではなかなか経験することができないリスクの少ない普通分娩の経験を積みたい」そんな思いからこの派遣プログラムへの参加を決断しました。京大病院のGCUで勤務をする中、母子ともに健康で出産できるのは奇跡ではないかと感じることもありました。もちろん、助産師だけの力でどうにもならないこともありますが、少しでもリスクを低くできたら、少しでも出生前に対策を打てたらと考えつづけた毎日。助産師にしかできない、助産師だからこそできるケアを分娩期・産褥期だけでなく、妊娠期からも提供したいと考えたこともまた、派遣を希望した理由のひとつかもしれません。
京大病院での経験を活かし、勉強会を開催
出向期間中は助産師としてはじめて妊娠期から積極的に関わったことで、その重要性を学ぶことができました。病棟の中だけではどうしても継続看護が途切れてしまいますが、地域と連携することで長期的なフォローができ、児のご家族が安心して暮らせることも大いに実感することができました。今後は私自身の学びだけでなく、出向先である綾部市立病院の助産師の役に立っていくことも目標です。京大病院で学んだGCU看護を活かし、新生児のポジショニングの勉強会やNICU看護手順の改訂、スタッフのNICU看護における不安や悩みの把握にも取り組んでいきたいと思っています。
2015~2024年度人材交流実績
- 綾部市立病院 ⇒ 京大病院:看護師 6名
- 京大病院 ⇒ 綾部市立病院:看護師 2名 助産師 1名

